小学生の保護者の方へ
習ったはずなのに解けないのは、なぜ?
言葉で隠されると、別の問題に見えてしまう
小学生を指導していると、最近よく感じることがあります。
それは、習ったことをそのままの形では使えても、少し言い方が変わると急に手が止まってしまうお子さまが増えているように思う、ということです。
今回は、実際にあった問題をもとに、このつまずきについて考えてみたいと思います。
こんな問題がありました
100個以上、150個以下の碁石があります。
この碁石は縦が6個の長方形にも、縦が7個の長方形にもあまることなく並べることができます。
碁石は全部で何個あるかを求めましょう。
この問題は、
- 6個ずつでもきれいに並ぶ
- 7個ずつでもきれいに並ぶ
ということなので、6でも7でも割り切れる数を考える問題です。
つまり、6と7の公倍数を考えます。
6と7の最小公倍数は42なので、42の倍数のうち100以上150以下にある数を探すと、
126
となります。ですから答えは、碁石は126個です。
ここまで見ると、「なるほど」と感じる方も多いと思います。
でも、実際にお子さまたちに解いてもらうと、ここで手が止まる子は少なくありません。
「公倍数の問題」と気づけないことがあります
この問題は、計算そのものが特別難しいわけではありません。
難しいのは、これは公倍数を使う問題だと気づけるかどうかです。
お子さまたちの中には、
- 公倍数の求め方は知っている
- 最小公倍数も習っている
- 6と7なら42になることも出せる
という子もいます。
それでも、この問題文を見たとたんに、何をしたらよいか分からなくなってしまうことがあります。
たとえば、
- とりあえず足してみる
- 6×7をしてみる
- 「長方形」という言葉に引っぱられて図形の問題だと思う
- 表を書いてみるけれど整理できない
ということが起こります。
つまり、知識がないのではなく、知っている知識と問題がつながっていないのです。
少し言い方が変わると、別の問題に見えてしまう
これは、この問題だけの話ではありません。
算数では、
- 「何倍」という言葉が出たら割合を考える
- 「あまりなく分けられる」と言われたら倍数を考える
- 「同じ間隔で並ぶ」と言われたら規則性を考える
- 「いくつかの条件を同時に満たす」ときに公倍数や公約数を考える
といったことがよくあります。
ところが最近は、少し言葉で包まれると、全部違う問題に見えてしまうことが増えているように感じます。
教科書や問題集で見た形ならできる。
でも、言い方が変わると分からなくなる。
これは、「習っていない」のではなく、習ったことを使う練習がまだ足りていない状態とも言えます。
なぜこういうことが起こるのでしょうか
教室で見ていて感じるのは、お子さまたちが問題の形で覚えてしまいやすいということです。
たとえば、
- 公倍数の問題は「公倍数を求めましょう」と書いてあるもの
- 割合の問題は「割合を求めましょう」と書いてあるもの
- 面積の問題は図形が出てくるもの
というように、考え方そのものではなく、問題の見た目で覚えてしまうことがあります。
そうすると、今回のように「6個ずつでもあまりなく並べられる」「7個ずつでもあまりなく並べられる」という言い方をされただけで、頭の中の「公倍数」という引き出しが開きません。
つまり、考え方を覚えているのではなく、問題の型だけを覚えている状態になりやすいのです。
本当に大切なのは、「これは何の問題か」を見抜く力
算数で大切なのは、計算できることだけではありません。
学年が上がるほど大切になるのは、この問題は、何を使って考える問題なのかを見抜く力です。
今回の問題で言えば、
- 6個ずつでも並べられる
- 7個ずつでも並べられる
という条件から、
6でも7でも割り切れる数だ
と読み取れるかどうかがポイントです。
ここに気づければ、あとは公倍数の考え方で進められます。
反対に、ここに気づけないと、知っているはずのお子さまでも手が止まってしまいます。
こういう力は、どうやって育てていくのでしょうか
一番大切なのは、答えだけでなく、どう考えたかを言葉にすることです。
たとえば今回の問題なら、
- 6個ずつでも並べられるってことは、6で割り切れるってことだね
- 7個ずつでも並ぶなら、7でも割り切れるね
- じゃあ、6でも7でも割り切れる数を探すんだね
- それって、公倍数のことだね
という流れを、言葉にして確認していくことが大切です。
ただ答えを出すだけでは、考え方が残りにくいことがあります。
でも、途中を言葉で整理すると、「この言い方のときはこう考えるんだ」というつながりが少しずつできていきます。
ご家庭でできることもあります
こうした力は、ご家庭でも少し意識することで育てやすくなります。
たとえば、問題が解けたときに、
- どうしてそう考えたの?
- 何がヒントになったの?
- この問題って、前にやった何に似てる?
- どの言葉を見てそう思ったの?
と聞いてみるだけでも違います。
大切なのは、正解したかどうかだけを見るのではなく、何を手がかりに考えたかを一緒に確認することです。
もし答えが合っていなくても、
- どこまでは合っていたのか
- どこでちがう方向に行ったのか
- 本当は何に気づけばよかったのか
を整理してあげると、次につながりやすくなります。
「できない」のではなく、「結びついていない」だけのことも多いです
こうした問題でつまずくと、保護者の方は
「うちの子、理解できていないのかな」
「ちゃんと習ったのに、なぜできないのだろう」
と心配になることもあると思います。
もちろん、基礎理解が足りていない場合もあります。
でも実際には、理解していないというより、結びついていないだけのこともとても多いです。
公倍数は知っている。計算もできる。でも、この問題でそれを使うとは思えない。こういう状態です。
これは、決して珍しいことではありません。そして、ここは練習次第でかなり変わっていける部分です。
Exciaで大切にしたいこと
Exciaでは、算数や数学を教えるときに、ただ「解き方を教える」だけではなく、
- この問題は何を使う問題なのか
- どの言葉がヒントになるのか
- どう考えれば、習ったことにつながるのか
を一緒に整理することを大切にしています。
算数が苦手になるお子さまの中には、計算そのものより、問題文の中に隠れているヒントを見つけるのが苦手なお子さまも少なくありません。
だからこそ、ただ答えを出す練習だけでなく、言葉を手がかりに考える練習が必要だと考えています。
最後に
今回の碁石の問題のように、考え方としては公倍数の問題でも、言葉で包まれるとまったく別の問題に見えてしまう。こうしたことは、今の小学生にかなり多いように感じます。
でも、それは「全然分かっていない」ということではありません。
習ったことが頭の中でつながっていない、どの言葉がヒントなのか気づきにくい、問題の見た目で判断してしまいやすい。そうしたことが重なっている場合も多いです。
だからこそ、必要なのは「もっと難しい問題をやること」より、どういう言葉が、どの考え方につながるのかを整理していくことなのだと思います。
Exciaでも、こうした「分かっているはずなのに使えない」を少しずつ減らせるように、丁寧に見ていきたいと考えています。






