塾長コラム|大阪の高校再編
「新しくできる高校って、やっぱり難しくなるんですか?」
今回のニュースを、進路選びの視点から整理します。
こんにちは!
ニュースでFIORA高校について取り上げられていましたね。
少子化が進む中、公立高校もここ10年でかなり再編が進みました。
再編のたびによくある質問は・・・
「新しくできる高校は、入試が難しくなるのかな?」
これについてまとめていこうかと思います。
大阪府教育委員会は、大阪市内の工業高校3校を再編し、2028年度に新しい工業系高校を開校する予定です。
校名案は、大阪府立FIORA(フィオーラ)高校(仮称)。ロボティクスやITなど、これまでの工業高校のイメージから少し広がった学びが予定されています。
ニュースを見ると、「名前が新しい」「ロボットを学べるらしい」といったところに目が行きます。
ただ、実際に進路を考えるご家庭にとって大事なのは、そこだけではありません。
保護者の方が気になるのは、きっとこのあたりです。
- 今の学校より、どれくらい勉強が必要になるのか
- 「工業高校」と言っても、どんな進路につながるのか
- うちの子にとって、本当に選択肢になる学校なのか
この記事では、FIORA高校(仮称)がどんな学校として構想されているのかを確認したうえで、統合すると入試の難度は変わるのかを、塾長としての視点から考えてみます。
まずは結論から
「統合したから偏差値が上がる」とは言えません。
ただし、学校の中身と進路の選択肢が変われば、集まる生徒の層は変わる可能性があります。
FIORA高校(仮称)は、単なる「3校を1校にする学校」ではありません
今回再編されるのは、泉尾工業・東淀工業・生野工業の3校です。開校予定地は、現在の東淀工業高校の敷地とされています。
ここで注目したいのは、学校のつくり方です。FIORA高校(仮称)は、従来の学科をそのまま並べ直すだけではなく、ICT・データ活用・技術に関する英語・課題解決型学習を、学校全体の軸に据える構想になっています。
全学年でICTを学ぶ
コンピュータやプログラミングの基礎を、一部のコースだけでなく全体で扱う構想です。
「つくる」で終わらせない
3年間を通したPBL(課題解決型学習)で、教科を横断して考え、形にする学びが予定されています。
大学・企業とつながる
大学や企業との連携、外部連携ラボを通じて、学校の外にある技術や仕事に触れる方針です。
予定されているのは、次の3系・6専科です。
IT・エレクトロニクスエンジニアリング系(仮称)
IT専科 / エレクトロニクス専科
メカニック・ロボティクスエンジニアリング系(仮称)
メカニック専科 / ロボティクス専科
ファッションデザイン系(仮称)
生活マテリアル専科 / デザインクリエイト専科
たとえばロボティクス専科では、二足歩行ロボットやアシストロボットに関する技術を学ぶ案が示されています。IT専科では、ロボット操作やAI開発につながるプログラミングも想定されています。
ここから見えてくるのは、「工業が好きな子のためだけの学校」ではなくなっていく可能性です。機械や電気が好きな生徒はもちろん、パソコン、ロボット、ものづくり、デザインに興味がある生徒にとっても、将来の選択肢になってくるでしょう。
では、統合すると入試は難しくなるのか
ここは、少し慎重に見ておきたいところです。
高校ごとの「公式偏差値」は大阪府から公表されていません。偏差値は模試会社や進学情報サイトごとに算出方法が違うため、異なる年・異なるサイトの数字をつないで「上がった・下がった」と言い切るのは、実はあまり正確ではありません。
そこで、まずは府教委が公表している志願状況を見ます。2026年度の一般入学者選抜では、統合元の東淀工業は学校全体で0.71倍、泉尾工業は0.66倍でした。また、工科高校の統合によって2025年度に開校した東大阪みらい工科は、2026年度に0.89倍でした。
2026年度の志願状況(学校全体)
0.71倍
0.66倍
(工科高校の統合による新校)
0.89倍
この数字から言えるのは、統合しただけで、急に高倍率の人気校になるわけではないということです。
一方で、FIORA高校(仮称)は、単に学校名が変わるケースよりも、教育内容の再設計が大きい新校です。ロボティクスやIT、デザインといった分野に魅力を感じる生徒が、これまでとは違う形で集まる可能性はあります。
ここでの注意点
FIORA高校(仮称)の難度を、今の段階で「偏差値○○になる」と言い切るのは早すぎるかなと思います。
募集人員、募集方法、学校特色枠、説明会で示される具体的な教育内容が、まだ出そろっていないためです。
過去10年の統合校は、実際にどうなったのか
過去の大阪府立高校を見ると、統合後の競争率の動きは一様ではありません。
新校として注目を集め、競争率を保っている学校もあれば、募集人員を減らしても志願者数が伸びなかった学校もあります。
つまり、統合そのものではなく、新しい学校がどのような価値を示せたかが重要です。
調査し、注目した点について
大阪府が公表している、各年度の入学者選抜における学校全体の競争率を整理しました。
今回は「偏差値」ではなく、志願者数 ÷ 募集人員で算出される倍率の数値を用いています。
① 淀川清流高校
2018年度開校|北淀高校・西淀川高校を統合
開校初年度は1.40倍。
その後は1倍前後から徐々に下がり、2025年度は0.71倍でした。
| 年度 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 競争率 | 1.40 | 1.09 | 1.03 | 0.96 | 0.85 | 0.86 | 0.91 | 0.71 | 1.02 |
※2026年度は募集人員が210人から175人へ減っています。倍率が1.02倍に戻ってはいますが、「人気が上昇した?」と読むのではなく、定員変更も合わせて見る必要があります。
② 大正白稜高校
2018年度開校|大正高校・泉尾高校を統合
開校初年度は1.11倍でしたが、その後は低下傾向が続きました。
2025年度は0.28倍となり、2026年度から新規募集が停止されています。
| 年度 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 競争率 | 1.11 | 0.84 | 0.64 | 0.58 | 0.86 | 0.75 | 0.46 | 0.28 |
③ 桜和高校
2022年度開校|扇町総合高校・南高校・西高校を統合
開校後もおおむね1倍を超える競争率を維持しています。
大学・産業界との連携や教育文理学科という学校の特色が、志願者に伝わっている事例といえます。
統合前の学校群の人気からすると、納得といったところ。
| 年度 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|---|---|---|
| 競争率 | 1.23 | 1.23 | 0.98 | 1.31 | 1.10 |
④ 東大阪みらい工科高校
2025年度開校|布施工科高校・城東工科高校を統合
FIORA高校(仮称)と同じ工科系の統合校として、特に参考になる学校です。
ただし、開校からまだ2年しか経っておらず、長期的な評価には早い段階かな?といったところです。
ただ現状では、定員割れを繰り返しています。
| 年度 | 2025 | 2026 |
|---|---|---|
| 競争率 | 0.89 | 0.89 |
※工学系大学進学専科を含む学校全体の競争率です。
大阪わかば高校について
大阪わかば高校も2020年度に、勝山高校と桃谷高校の一部を再編して開校した統合校です。
ただし、多部制単位制・昼夜間単位制という選抜の仕組みが異なるため、全日制高校の競争率と同じ土俵で比較するのは適切ではありません。このため、上の比較表からは外しています。
過去の高校の情報からわかること
統合しただけで、急に高倍率になったり、入試が難しくなったりするわけではありません。
新しい教育内容、進路への強さ、募集人員、通学しやすさまで含めて、受験生に「ここを選ぶ理由」が伝わった学校ほど、競争率を維持しやすいと考えられます。
※競争率は各年度の大阪府公表資料に基づき、当教室で整理したものです。年度により募集人員、学科・専科、選抜制度が異なるため、単純な学校間比較や将来の入試難度の保証を示すものではありません。
2028年度は、入試制度そのものも変わります
さらに大きなポイントがあります。FIORA高校(仮称)が開校する2028年度から、大阪府の公立高校入試は新しい制度に変わります。
学校特色枠の導入
学校の特色や求める生徒像に合う受験生を、学校独自の方法も使いながら優先的に選抜する仕組みです。
第2志望の出願機会
一定の条件のもとで、公立第2志望校にも出願できる機会が設けられます。
基本は5教科
原則として、国語・社会・数学・理科・英語の5教科で学力を評価する方針は示されています。
つまり、FIORA高校(仮称)は「新校だから偏差値がどうなるか」だけでなく、どんな生徒を求める学校になるのかまで見ていく必要があります。
特に、ITやロボット、デザインに関心を持ち、自分で学んだり、ものづくりに取り組んだりしてきた生徒にとっては、これまで以上に自分の興味を生かせる入試になるかもしれません。
塾長としては、こう見ています
FIORA高校(仮称)は、旧3校の「名前を一つにする」だけの再編ではありません。学ぶ内容、設備、外部とのつながり方を含めて、新しい工業系高校をつくろうとしている点に意味があります。
だからこそ、開校初年度は一定の注目を集めるでしょう。
特に、ロボットやプログラミング、3Dプリンタ、デザインなどに興味を持つ中学生にとっては、「自分が行ってみたい」と思える学校になり得ます。
ただ、受験の現場で大切なのは、話題性だけで志望校を決めないことです。
FIORA高校(仮称)を候補にするときは、次の順で見てください。
- どの分野を学びたいのか
ITなのか、ロボットなのか、機械なのか、デザインなのか。「新しいから」ではなく、3年間続けたい分野かを考えます。 - 卒業後はどんな道があるのか
就職、専門学校、大学進学。学校がどこまでサポートするのかを確認します。 - 入試で何が見られるのか
5教科の基礎はもちろん、学校特色枠の内容が出れば、求める生徒像も見えてきます。 - 毎日通える距離か
高校生活は3年間です。設備や名前だけでなく、通学時間や生活リズムも大切な判断材料です。
そして今、中学生に一番伝えたいのは、「FIORAに行くかもしれないから、今すぐ特別な勉強を始めなければ」と焦る必要はないということです。
2028年度の入試でも、原則5教科の学力検査が行われます。まずは、国語・数学・英語を中心に、5教科の土台をきちんとつくること。そのうえで、自分は何に興味があるのか、どんなことを学んでみたいのかを少しずつ言葉にしていくことが、将来の学校選びにつながります。
保護者の方へ|「偏差値」だけでなく、子どもの興味を聞いてみてください
新しい高校のニュースが出ると、どうしても「偏差値は?」「受かるにはどれくらい必要?」という話になりやすいと思います。もちろん、それは大切なことです。
ただ、今回のFIORA高校(仮称)のように、学べる分野そのものが広がる学校では、もう一つ聞いてあげてほしいことがあります。
「どの専科なら、ちょっと面白そう?」
この一言から、子ども自身も気づいていなかった興味が見えてくることがあります。
「ロボットを作ってみたい」「パソコンなら好きかも」「デザインの方が合っているかも」。そんな会話ができると、学校選びは偏差値だけの比較ではなくなります。
進路は、今すぐ結論を出すものではありません。けれど、ニュースをきっかけに、本人の興味と将来の選択肢を一緒に考えることはできます。今回のFIORA高校(仮称)は、その会話を始める良いきっかけになる学校だと感じています。
まとめ
FIORA高校(仮称)は、統合によって生まれる「新しい名前の高校」ではなく、学び方そのものを変えようとしている学校です。
入試の難度は、統合だけでは決まりません。今後公表される募集人員、学校特色枠、説明会での具体的な教育内容、そして進路実績を見ながら判断していく必要があります。新しい情報が出れば、教室でも改めて整理していきます。






