
指定校推薦を選ぶ前に──“合格しやすさ”の裏にある現実と、本当に後悔しないための準備
「指定校推薦は有利と聞くけれど、うちの子に合っているの?」「評定はどのくらい必要?」「もし合格した後に気持ちが変わったら…?」
18年・800名超を指導してきた塾長の立場から、制度の骨格・メリット/注意点・実践的な準備法を、保護者の方と生徒の双方に向けて丁寧に解説します。
指定校推薦とは?(全体像と制度の位置づけ)
指定校推薦は、大学が特定の高校を「指定」し、その高校内で選考された生徒だけが出願できる学校推薦型選抜の一種です。校内で推薦されれば大学に出願でき、合格率は極めて高いのが特徴です。
ただし専願(合格したら必ず進学)であり、合格後の辞退は認められません。私立大学を中心に広く実施されており、入試制度の多様化の中で大きな役割を担っています。
文部科学省の統計でも、推薦・総合型選抜で進学する生徒は年々増加しており、現在では入学者の半数近くを占める大学もあります。

指定校推薦のメリット
- 合格可能性が高い:校内選考を突破すれば大学合格はほぼ確実。進路の安心感が得られます。
- 進路が早期に確定:秋〜冬に合否が出るため、高校生活の後半を落ち着いて過ごせます。
- 人物面の評価:成績だけでなく、学校生活や課外活動、欠席・遅刻の有無も含めて評価されます。
- 推薦枠の存在:私立大学を中心に広く設けられており、選択肢が増える可能性があります。
塾長として感じるのは、この制度が「日々の努力を着実に積み上げてきた生徒」にとって大きな追い風になるという点です。特別な一発勝負ではなく、日常の積み重ねが評価される制度と言えるでしょう。

注意点・誤解しやすいポイント
- 専願・辞退不可:「合格したら必ず進学」が原則です。安易に「とりあえず受けてから考える」はできません。
- 枠は高校ごとに異なる:同じ大学でも、高校によって学部・学科の枠が違い、年度によって変動することもあります。
- 評定平均を満たしても競争:大学の基準を超えても、校内枠に入れるかは別。実際には学年上位が優先されます。また最近では「大学へ推薦したのち、合格後もしっかりと取り組んでもらえる生徒なのか」という点を高校側も重視している傾向が強くなっています。
- 大学進学後の責任:学業状況は母校に伝わることもあり、枠の信頼性は後輩へ引き継がれます。
私の経験上、ここを軽視して受けると「後悔した」という声を聞くことになります。だからこそ、本人と保護者がしっかり話し合うことが大切です。
年間スケジュール(目安と流れ)
時期 | 主な動き | ポイント |
---|---|---|
高1〜高2 | 定期テスト、課題提出、出欠状況、部活動・委員会 | 評定は高1から積み上げられる。日常の積み重ねが鍵 |
高3夏 | 学校が枠を公表/志望調査 | 希望大学、学部の枠があるか要確認 |
高3秋 | 校内選考(志望理由書・面接・小論文) | 選考の厳しさは学校次第。準備を早めに |
高3冬 | 大学で選考/合否判定 | 11〜12月に合格通知。専願進学が確定 |
校内選考で見られる主な観点
- 評定平均(基準値:3.5〜4.0が多い、特定学部においては英語のみ4.2以上等の条件が追加)
- 提出物の丁寧さ、小テストの得点やノート提出の継続度
- 欠席・遅刻の少なさ(皆勤は大きな強み)
- 部活動や委員会などでの継続的な活動
- 志望理由書の内容と一貫性
- 面接・小論文での表現力・論理性
これはつまり、「普段から誠実に取り組んでいるか」がそのまま結果につながるということです。定期テストだけでなく、生活習慣や態度も見られる点を忘れないでください。
合格を引き寄せる具体的準備(保護者・生徒別)
生徒向けの習慣
- 定期テストで「弱い科目の底上げ」から始める
- 欠席・遅刻をゼロに近づける努力をする
- 部活や委員会で責任ある役割を経験する
- 志望理由を「体験→学び→将来」に結びつける
- ニュース記事を週1本要約し、意見を言語化する
保護者向けの伴走
- 定期テストの振り返りを家庭で行い、生活改善を一緒に考える
- 学校からの公式情報を最優先にする(SNSや噂に流されない)
- 「専願の重み」を家族会議で共有し、納得のうえで進路を決める

一般選抜との違い・併走のコツ
指定校推薦は「合格しやすい」と言われますが、それは校内選考を突破した場合の話です。一般選抜と比べたとき、勉強負担は軽い反面、選択の自由度は小さく、辞退もできません。
したがって指定校推薦を狙う場合も、基礎学力の維持を怠らず、一般選抜と併走するのが最も安全です。万一推薦がうまくいかなかった場合にも備えられます。
観点 | 指定校推薦 | 一般選抜 |
---|---|---|
合格可能性 | 校内選考を通れば高い | 全国規模の競争、学力重視 |
出願の自由度 | 専願(進学確定) | 併願が可能 |
必要な準備 | 評定・活動・志望理由・面接・小論文 | 共通テストや個別試験 |
決定時期 | 秋〜冬 | 冬〜春 |
よくある質問(辞退・学部変更・ミスマッチなど)
Q1. 合格後に辞退はできる?
原則としてできません。指定校推薦は「学校を代表して出願する」制度であり、後輩の信頼にもつながるため辞退は認められません。
Q2. 学部を途中で変えられる?
合格後の変更は基本不可です。どうしても迷うなら校内選考前に家族で熟議することが必要です。
Q3. 評定の目安は?
大学や学部ごとに異なりますが、3.5〜4.0程度が多いです。満たしても校内競争に勝つ必要があります。最近では成績が良ければ優先というものではなく、「大学へ推薦したのち、合格後もしっかりと取り組んでもらえる生徒なのか」という点を高校側も重視している傾向が強くなっています。
Q4. 面接や小論文が苦手です。
ニュース記事を要約し、自分の意見を述べる練習が有効です。Exciaでは模擬面接や小論文添削で実践的な力を養います。
塾長から最後に:選択の責任と、後輩に残すもの
指定校推薦は「合格しやすい」だけではなく、「信頼を引き継ぐ制度」です。進学後に学業を怠れば、後輩の推薦枠が減る可能性すらあります。つまり、推薦で進むことは自分の進路+後輩の未来にも関わる選択なのです。
逆に言えば、誠実に学び続ければ「母校の信頼」を守り、後輩たちに道を拓くことができます。だからこそ、受けると決めたら最後まで責任を持ちましょう。
受験は個人の戦いであると同時に、学校・家庭・塾が支えるチーム戦です。迷ったら一人で抱え込まず、ぜひ相談してください。

参考リンク
制度に関する最新情報は文部科学省公式ページをご確認ください。