古典を少し面白く読む話
『枕草子』が入試でよく出る理由
清少納言の感性と古文の読み方
古典の入試問題でよく出る作品の一つに、『枕草子』があります。
『枕草子』と聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは、「春はあけぼの」ではないでしょうか。
ただ、『枕草子』の面白さは「春はあけぼの」だけではありません。
清少納言が見たもの、感じたこと、すてきだと思ったこと、逆に「これはちょっと嫌だな」と思ったことまで、かなり率直に書かれている作品です。
つまり『枕草子』は、単なる古文の教材ではなく、清少納言という人のものの見方がよく表れた随筆です。
入試で出やすい作品だからこそ、ただ現代語訳を覚えるだけでなく、「清少納言は何を面白いと思ったのか」「どこに価値を感じているのか」を考えながら読むことが大切です。
『枕草子』とは?清少納言が書いた平安時代の随筆
『枕草子』は、平安時代に清少納言によって書かれた随筆です。
清少納言は、一条天皇の中宮である定子に仕えた女性です。宮中での生活や、自然の美しさ、人々の振る舞い、日常の中で感じたことなどを、独自の感性で書き残しました。
『枕草子』の特徴は、物語のように一つの長いストーリーが続いていく作品ではないところです。
- 美しいと思ったもの
- 趣があると思ったもの
- 残念だと思ったもの
- 腹立たしいと思ったもの
- 宮中での出来事
- 人の振る舞いへの評価
こうした内容が、短い文章の中に次々と書かれています。
今の感覚で言えば、清少納言の観察日記やエッセイに近いかもしれません。
『枕草子』が古文入試でよく出る理由
『枕草子』が入試で出やすい理由は、いくつかあります。
まず、文章の中に清少納言の価値観や感情が出やすいことです。
『枕草子』では、作者が
- 何を美しいと思っているのか
- 何を趣深いと思っているのか
- 何を嫌だと感じているのか
- どんな人の振る舞いをよいと思っているのか
がよく表れます。
そのため、入試では次のような問題が作りやすくなります。
- 作者はなぜそう感じたのか
- この場面で何を評価しているのか
- どの表現から作者の気持ちが分かるのか
- 清少納言のものの見方はどのようなものか
また、『枕草子』は随筆なので、物語とは少し読み方が違います。登場人物の関係を追うというより、作者の感性や判断を読むことが大切になります。
「春はあけぼの」は、ただの季節紹介ではありません
『枕草子』で最も有名なのが、冒頭の「春はあけぼの」です。
春は明け方がよい。
夏は夜がよい。
秋は夕暮れがよい。
冬は早朝がよい。
このように、四季それぞれのよさが短く美しく表現されています。
ここで大切なのは、これは単なる季節の説明ではないということです。
その季節の中で、どの時間帯やどの景色が一番よいと感じるのかが書かれています。
つまり、同じ春でも「昼」や「夜」ではなく「あけぼの」がよい。
同じ秋でも「朝」ではなく「夕暮れ」がよい。
ここには、清少納言のかなり細かい感性があります。
『枕草子』を読むときは、「何が書いてあるか」だけでなく、なぜそれをよいと思っているのかを考えることが大切です。
清少納言は、観察力がとても鋭い
『枕草子』を読むと、清少納言の観察力の鋭さに驚きます。
自然の変化、人の言葉づかい、服装、態度、場の空気。そうしたものを細かく見ています。
そして、見たものに対してかなりはっきり評価します。
「これはすばらしい」
「これは趣がある」
「これは残念」
「これは興ざめだ」
というように、清少納言の判断が文章に出てきます。
ここが『枕草子』の面白いところです。
ただ出来事を並べているのではなく、清少納言がどう見たか、どう感じたかが中心にあります。
だから入試で読むときも、単語の意味だけでなく、作者の評価をつかむことが大切になります。
『枕草子』は「をかし」の文学として読むと面白い
『枕草子』は、よく「をかし」の文学と言われます。
「をかし」は、古典では「趣がある」「おもしろい」「すてきだ」といった意味で使われます。
『源氏物語』が「あはれ」の文学と説明されることがあるのに対して、『枕草子』は「をかし」の文学として扱われることが多いです。
『枕草子』では、しみじみとした悲しみよりも、
- 明るさ
- 知的なおもしろさ
- 気の利いた感じ
- 美しさへの敏感さ
- 人や物事を評価する目
が目立ちます。
だからこそ、『枕草子』は「センスの文章」として読むと面白くなります。
清少納言が何を見て、何を「いい」と思ったのか。そこを追うと、古文がただの訳作業ではなくなっていきます。
『枕草子』の読み方① 作者が何を評価しているかを見る
受験生が『枕草子』を読むときは、まず作者が何を評価しているかを見ることが大切です。
『枕草子』では、清少納言が何かを見て、それに対して評価していることが多いです。
- よいと思っているのか
- 残念だと思っているのか
- 面白がっているのか
- 呆れているのか
- 皮肉を込めているのか
こうした視点を持つと、本文の読み取りがしやすくなります。
古文では、現代文のように「私はこう思いました」とはっきり書かれていないことも多いです。だからこそ、表現や言葉の選び方から、作者の判断を読み取る必要があります。
『枕草子』の読み方② 「をかし」の感覚を意識する
『枕草子』では、明るく知的な面白さや、趣深さが大切です。
ただ現代語訳をするだけでなく、
清少納言は、どこに趣を感じているのか
を考えると読みやすくなります。
「をかし」は、単に「おもしろい」という意味だけではありません。美しい、趣がある、気が利いている、心ひかれる、といったニュアンスを含みます。
『枕草子』を読むときは、この「をかし」の感覚を持っておくと、作者の見方がつかみやすくなります。
『枕草子』の読み方③ 宮中の生活や古典常識を知っておく
『枕草子』には、宮中での生活や身分関係が出てきます。
当時の生活や人間関係を少し知っているだけで、文章の見え方が変わります。
- 宮中では身分や立場が大切だったこと
- 服装や言葉づかいに教養が表れたこと
- 和歌や会話のやり取りが重視されたこと
- 季節感や美意識が大切にされたこと
こうした古典常識が分かっていると、本文の中で清少納言が何を評価しているのかが見えやすくなります。
入試で『枕草子』を読むときも、単語や文法だけでなく、背景知識が読み取りを助けてくれることがあります。
『枕草子』の読み方④ 清少納言の言い方に注目する
清少納言は、かなりはっきり物を言う人物として読めます。
だからこそ、文章の中にある少し皮肉っぽい表現や、鋭い観察に注目すると面白くなります。
- なぜこの表現を使ったのか
- 相手をほめているのか、皮肉っているのか
- 何に対して不満を持っているのか
- どこに知的なおもしろさがあるのか
こうしたところに注目すると、『枕草子』はかなり読みやすくなります。
清少納言の文章は、ただきれいなだけではありません。人や物事をよく観察し、それを自分の感覚で評価するおもしろさがあります。
『枕草子』は、今でいうエッセイに近い
『枕草子』は、今でいうエッセイに近い作品です。
身の回りのことを観察し、感じたことを書き、自分なりに評価する。この点では、現代の文章にもかなり近いところがあります。
たとえば、現代でも
「こういう人はすてきだ」
「こういう場面はきれいだ」
「こういう言い方は少し残念だ」
「こういう瞬間が好きだ」
という文章はあります。
『枕草子』も、それに近い感覚で読むと、かなり読みやすくなります。
古典だから難しいのではなく、昔の人が、自分の感じたことを文章にしていると考えると、少し近く感じられるはずです。
Exciaで古典を読むときに大切にしたいこと
Exciaでは、古典をただの暗記科目として扱うのではなく、作品そのものの面白さも大切にしたいと考えています。
古文単語、助動詞、敬語。
これらはもちろん必要です。
ただ、それだけでは古典はしんどくなります。
『枕草子』なら、
- 清少納言は何を美しいと思ったのか
- どんな人の振る舞いをよいと思ったのか
- 何にがっかりしたのか
- なぜその表現が印象に残るのか
を考えることが大切です。
そうすると、古文は少しずつ「訳すだけの文章」ではなくなります。
作品の背景を知る。
作者の感性を知る。
そのうえで本文を読む。
この流れができると、古典はかなり読みやすくなります。
『枕草子』は、その入口としてとてもよい作品です。
最後に
『枕草子』は、入試でもよく出る重要な古典作品です。
ただし、単に有名だから大事なのではありません。
清少納言の観察力。
「をかし」と表される明るく知的な面白さ。
自然や人の振る舞いを細かく見る感性。
宮中での生活や人間関係。
そうしたものが、文章の中にしっかり表れています。
受験生には、『枕草子』をただ「春はあけぼのの作品」として覚えるのではなく、清少納言のものの見方が表れた随筆として読んでほしいですね。
古典は、背景や作者の考え方が見えてくると、一気に読みやすくなります。
『枕草子』は、その入口としてとてもよい作品です。






