受験生・保護者の方へ
受験生のメンタルヘルスについて
頑張っているのにしんどくなるのは、弱いからではありません
受験期は、成績だけでなく、気持ちの波も大きくなりやすい時期です。
「昨日までは前向きだったのに、今日は何もしたくなさそう」「模試のあとだけ急に元気がなくなる」「家ではイライラしているのに、外では平気そうに見える」――こうした変化は、決して珍しいことではありません。
受験生の不調を見ていると、つい「気持ちの問題では」「もう少し頑張れば」と考えてしまいそうになることがあります。
ですが実際には、受験期のしんどさは、気合や根性だけで説明できるものではありません。
努力と結果がすぐには結びつかないこと、他人と比べやすいこと、睡眠や生活リズムが崩れやすいこと、不安をうまく言葉にできないこと。こうしたことが重なると、どんな受験生でも心が苦しくなりやすくなります。
受験期にメンタルが崩れやすいのはなぜか
まず大きいのは、努力と結果がすぐには一致しないことです。
英単語を覚えても、翌日に偏差値が一気に上がるわけではありません。数学の問題集を何ページも進めても、その場ですぐに「伸びた」と実感できるとは限りません。勉強は積み重ねが必要なのに、受験生はいつも「今やっていることに意味があるのか」という不安を抱えやすいです。
もう一つは、比較が増えることです。
学校、模試、塾、友達、SNS。受験期はどうしても周りの状況が目に入ります。自分より判定が良い人、勉強時間が長そうな人、すでに志望校を決めて動いている人を見ると、「自分は足りていないのでは」と感じやすくなります。
さらに、睡眠や生活リズムが崩れることも大きな原因です。
よくある悪循環
不安になる
→ もっとやらないとと思って寝る時間を削る
→ 集中力が落ちる
→ 思うように進まない
→ さらに不安が強くなる
こうなると、気持ちだけでなく、体までしんどくなってきます。
受験生の不調は、どんな形で表れやすいか
受験期の不調は、「落ち込んでいる」とは限りません。むしろ、本人も周りも最初は気づきにくいことがあります。
1.頑張りすぎて、急に動けなくなる
真面目な子に多いタイプです。やるべきことはきちんとやる。宿題もする。自習にも行く。けれど、ある日から急に手が止まる。机に向かっているのに進まない。何をやればよいか分からなくなる。涙が出る。朝起きるのがしんどくなる。
これは怠けではなく、ずっと張りつめていた心と体が限界に近づいているサインのことがあります。
2.イライラや怒りっぽさとして出る
不安や焦りをうまく言葉にできないと、怒りっぽさとして出ることがあります。
- 少し声をかけただけで怒る
- 勉強の話をされると機嫌が悪くなる
- 「ほっといて」と言うことが増える
- 家族への当たりが強くなる
こうした変化は、反抗だけでなく、内側のしんどさが表に出ていることもあります。
3.体の不調として出る
心のしんどさは、体に先に出ることも多いです。
- 頭痛
- 腹痛
- 食欲低下
- 朝起きられない
- 寝つけない
- だるさが続く
病院で大きな異常が見つからないときでも、ストレスが関係していることがあります。
「メンタルが弱い」のではなく、支える条件が足りなくなっている
ここは、とても大切なポイントです。
受験期の不調が出たとき、本人は「自分が弱いからだ」と思いやすいです。保護者も、「このくらいは乗り越えてほしい」と感じることがあるかもしれません。
でも実際には、心を支える条件が足りなくなっていることが多いです。
支える条件が足りなくなりやすい例
- 睡眠が足りていない
- 勉強計画が重すぎる
- 一人で抱え込みすぎている
- 相談しても否定されると思っている
- できたことより、足りないことばかり見ている
- 家でも学校でもずっと緊張している
こうした状態が続けば、どんな子でもしんどくなります。反対に、睡眠がある程度守られていて、話を聞いてくれる大人がいて、やることが整理されていて、小さな達成感が積める状態なら、同じ受験期でもかなり違います。
受験生本人へ しんどいときの立て直し方
1.まず睡眠を削らない
不調のときほど、「遅れを取り戻さないと」と思って夜更かししやすくなります。でも、ここで睡眠を削ると、集中力も判断力も落ちやすくなります。
しんどいときほど、最優先は勉強量ではなく、まず生活を立て直すことです。
2.「全部やる」ではなく「今日はここまで」にする
気持ちが落ちているときに、「とにかく頑張る」はうまくいきにくいです。
その日にやることを3つに絞る。1時間ではなく30分単位で区切る。英単語100個ではなく、20個と確認テストにする。
不調のときは、達成感の単位を小さくすることが大切です。
3.不安を頭の中だけで回し続けない
「落ちたらどうしよう」「もう間に合わないのでは」「周りに置いていかれているかも」――こうした不安を頭の中だけで回していると、どんどん苦しくなります。
紙に書く。誰かに話す。やることを見える形にする。そうすると、漠然とした不安が、「何をすればいいか」に少しずつ変わっていきます。
4.外に出る時間や軽い運動をゼロにしない
長時間の運動でなくてかまいません。10分歩く、ストレッチをする、朝に日光を浴びる。これだけでも、頭の切り替えには意味があります。
保護者の方へ 関わり方で大きく変わること
保護者の関わり方は、受験生の安心感にとても大きく影響します。
1.評価より、まず観察する
受験生が一番つらいのは、自分でも不安なのに、さらに評価されることです。
避けたい言い方
- そんな勉強量で大丈夫なの?
- このままだと厳しいんじゃない?
- もっと頑張らないと
- みんな同じだよ
おすすめの言い方
- 最近、少し疲れていそうに見えるよ
- 今、一番しんどいのは何?
- 今日は何が終わった?
- 一緒に整理してみようか
2.励ますより、まず安心させる
受験生はすでに十分追い込まれていることがあります。そんなときに必要なのは、さらに火をつけることではなく、安心できる土台です。
結果が悪い日でも、人格まで否定しない。すぐに説教にしない。話を聞く。食事や睡眠の土台を支える。こうしたことが、立て直しの力になります。
3.受験の話しかしない親子関係にしない
家の中が「勉強」「成績」「志望校」の話だけになると、受験生は息が詰まりやすくなります。
食事のときは別の話をする。短い雑談を挟む。無理に前向きにしなくても、普通に接する時間をつくる。そうしたことも大切です。
実際によくあるケース
ケース1
模試の結果が悪く、自信をなくして勉強時間だけを増やした生徒がいました。
でも、睡眠が削られて集中力が落ち、勉強の中身が薄くなり、さらに不安が強くなっていました。
このとき必要だったのは「もっとやること」ではなく、「睡眠を戻すこと」と「やる内容を絞ること」でした。
ケース2
家でずっとイライラしていた生徒がいました。保護者の方は「反抗期だと思っていた」とおっしゃっていました。
ただ、話を聞くと、不安が強いのに言葉にできず、怒りとして出ていた状態でした。
勉強の話を詰めるより、まず「最近かなりしんどそうに見える」と言葉にしてもらったことで、少しずつ本音が出てきました。
ケース3
頭痛や腹痛が続き、勉強どころではなくなった生徒もいました。
最初は「気のせいかも」と思っていたそうですが、実際にはかなりストレスがたまっていました。
体の不調は、心のSOSとして出ることもあります。本人が言葉にできないぶん、周りが気づくことが大切です。
こういうときは、早めに相談したほうがよいサイン
受験期のストレス自体は珍しくありません。ですが、次のような状態が続くときは、「そのうち戻るだろう」で様子を見すぎないほうがよいです。
- 眠れない、朝起きられない状態が続く
- 食欲低下や体調不良が目立つ
- 強い不安や落ち込みが続く
- 学校や塾に行けなくなる
- 涙が増える、表情が極端に乏しくなる
- 「消えたい」「いなくなりたい」といった発言がある
こうしたときは、一人で抱えず、学校の先生、スクールカウンセラー、塾、かかりつけ医、地域の相談窓口などにつないでいくことが大切です。
Exciaとして大切にしたいこと
Exciaでは、受験をただの点数勝負だとは考えていません。
結果はもちろん大切です。ですが、結果を出すためには、勉強内容だけでなく、その子が続けられる状態にあるかを見る必要があります。
Exciaで見たいこと
- 今の計画は重すぎないか
- 睡眠や生活リズムは崩れていないか
- 不安を一人で抱えていないか
- 何をやるべきか見えなくなっていないか
- できたことをきちんと積み上げられているか
「もっと頑張れ」だけでは、受験はうまく進みにくいです。原因を整理し、生活を立て直し、やることを絞り、周囲の支えを増やしていく。その積み重ねが、結果につながっていくと考えています。
最後に
受験生のメンタルヘルスは、特別な子だけの問題ではありません。むしろ、真面目で頑張れる子ほど、周りに気づかれないまま苦しくなっていることがあります。
だからこそ、
- 本人は、自分を追い込みすぎないこと
- 保護者は、結果だけでなく状態を見ること
- 周りの大人は、早めにSOSに気づくこと
が大切です。
頑張っているからこそ、しんどくなることがあります。
それは弱さではなく、ちゃんと支えが必要な状態だということです。
受験生本人も、保護者の方も、少しでも安心して前に進めるような環境を、一緒につくっていけたらと思います。






